
東京・南青山に佇むレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ成澤由浩氏は日本の里山にある豊かな食文化と先人たちの知恵(里山文化)を自身のフィルターを通して料理で表現する“イノベーティブ里山キュイジーヌ (革新的 里山料理) ”という独自のジャンルを確立し、世界のサステナブルガストロノミー(持続可能な食文化)を牽引している。
成澤氏の情熱は料理のみならずレストランのインテリアデザインにまで及び、シェフみずからプランニングした「NARISAWA」のリフォームでは、調理エリアのキッチン・壁・床にNeoLiTHを採用し、デザインと機能性を兼ね備えた理想的な厨房を実現した。

持続可能なレストラン経営の
新境地とは
店舗リニューアルでは
どのようなコンセプトで
プランニングを
していったのでしょうか?


私がレストランをデザインする際に最も重視しているのは、「主役は料理とお客様」ということです。そのため店内は装飾品や音楽などの余分な要素をなくし、シンプルで洗練された空間になるよう計画をしています。
このコンセプトは、私が長年過ごしていたヨーロッパでのレストラン文化から学んだことがベースになっています。というのも、ヨーロッパでは、レストランは単に食事をする場所ではなく、人々が集まり、会話を楽しむ場所として機能しているためです。ですから私のレストランでも、テーブルの周りで繰り広げられる会話や、その場の雰囲気を最も大切にしています。
リニューアルでは、客席とキッチンを“一体化させる”という新しい挑戦をしました。お客様をキッチンにお招きして見学していただくなど、キッチンもレストランの一部として裏も表もない食事体験を提供できるようにしたかったのです。
NeoLiTHを採用した
理由を教えてください。
まず、NeoLiTHには、環境負荷の少ないマテリアルを探しているときに出合いました。キッチンの天板・キャビネット、床、腰壁にNeoLiTHを採用した理由は、カーボンニュートラルを達成した建材であることです。さらに天然石のようなリアルなテクスチャーを持ちながらも、耐久性・清掃性が高い点で、私が実現させたかったことにぴったりだと考え採用しました。こうした素材を使用することで、環境負荷を軽減しながら、いつまでも美しく機能的な空間が完成します。
またNeoLiTHはカスタマイズ性が高く、さまざまな色やテクスチャーのバリエーションが揃っている点も魅力です。今回選んだ「BASALT BLACK(バサルトブラック)」は、本物の玄武石と変わらない質感で落ち着いた高級感を演出しつつ、さらに汚れと傷がつきにくいという実用性も兼ね備えているところが非常に気に入りました。
さらに、NeoLiTHは高い耐熱性があります。調理中に熱い鍋をNeoLiTHのワークトップに直接置いても、表面にダメージが出ません。また、ステンレスと違って焼き付きがないので手入れが楽なところも助かっています。表面は、水拭きだけで簡単に汚れを落とすことができ、掃除が簡単で衛生面でも優れています。
これらの特徴は、私たちのようなレストランでは非常に大切で、優れた意匠を長期間保てることに加えて、スタッフの労働負荷を軽減し、より効率的な運営を可能にしていくのです。
取り組みについて
教えてください。
レストラン経営において、サステナビリティは非常に重要なテーマです。私たちは、食材の選定から、インテリアの素材選びに至るまで、環境への配慮を徹底しています。今回のNeoLiTHの採用もその取り組みの一つです。
NeoLiTHのテクスチャーは天然石と変わらないものですが、リサイクル原料(※)を積極的に使用し、カーボンニュートラルを達成した建材なので安心です。一方、天然石を切り出してキッチンをつくったらどうでしょうか。山を切り崩すことと変わらない行動ですから環境負荷が計り知れず、仮に予算がかけられたとしても時代に合いません。
サステナブルな取り組みとして労働環境の改善もその一環です。世界中のレストランでスタッフの長時間労働が問題になっています。スタッフが健康的に働き続けられるよう、NARISAWAでは20時閉店の営業時間を設定し、仕事と家庭のバランスを取りやすい環境を整えています。つまり閉店後の清掃をいかにスピーディに行えるかも重要で、NeoLiTHのような掃除しやすい素材を選ぶことが業務効率化に直結していきます。このように取り組むことでスタッフの定着率も向上し、子育て中のスタッフも復帰しやすくなり、持続可能な人材育成にも貢献しています。
最大98%使用して製造されている※
※リサイクル率はモデルにより異なります
これからの展望について
お聞かせください。
今後は、今までと同様にレストランを続けていくことに加え、店舗プロデュースにも取り組んでいきたいと考えています。すでに上海の「NARISAWA SHANGHAI」やシンガポール「BEES BY NARISAWA」は私が店舗の総合プロデュースを行い、その国の歴史やストーリーにあったデザインを実施しました。上海では、中国から日本に伝わった技術を用いた西陣織のタペストリーをシンボリックにインテリアに使って、空間設計をしています。
機会があれば今後の店舗デザインにもNeoLiTHを使ってみたいです。カスタマイズしやすくてデザインの幅が広がりますし、私のコンセプトにもマッチしていますので。これからも各国の文化やニーズに合わせた店舗づくりを行い、多くの人々に幸せを届ける存在でありたいと願っています。
NARISAWA
オーナーシェフ 成澤 由浩氏
2010年にスペインの世界最高峰の料理学会「Madrid Fusion」にて世界で最も影響力あるシェフに選ばれるなど、世界にも認められた日本を代表する料理人の一人。オーナーシェフを務める「NARISAWA」は「世界のベスト・レストラン50」への入賞や、「ミシュランガイド東京」で高い評価を受けている。